20代と比べると、転職や昇給によって自由になるお金が少しずつ増えている30代。「資産運用」という言葉を聞く機会は多いものの、実際はそのままにしている人も多いのではないでしょうか。日本人の平均寿命から考えると、老後生活を含め今後50年近い人生設計が必要です。
ここではセカンドライフ資金を貯める方法の1つである、iDeCo(イデコ)について解説します。「運用」という言葉に抵抗がある方でも読んで頂けるよう、できるかぎり易しい表現を用いて説明しています。賢く資産を増やすためにも、ぜひiDeCoを利用しましょう。
金融ライター
Larako
生命保険会社にて7年間勤務後、「保険への抵抗感」をなくしたいという想いから書くことを仕事に。2000人以上のお客様を担当し、そこから得た保険にまつわる知識を広く伝えるべく活動中。一児の母。
生命保険会社にて7年間勤務後、「保険への抵抗感」をなくしたいという想いから書くことを仕事に。2000人以上のお客様を担当し...
「始めてみようかな?」と思ったいまが始め時です!
iDeCoってなに?
iDeCo(イデコ)という言葉は、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。簡単に言うと、iDeCoとは「自分が出したお金を、自分自身の考えで運用し、60歳以降に受け取る老後資金を積み立てる方法」のことです。以下で、それぞれの言葉についてもう少し詳しく解説していきます。
自分でお金を出す
iDeCoは自分のお金を使います。自分の貯蓄から出すお金ですので、いくら出すかを自分で設定することが可能です。職業によって出せるお金の上限が決まっていますので、のちほど詳しく解説します。
自分で運用
自分のお金を、自分で運用します。「リスクの低い運用がしたい」「せっかくだから強気で運用してみたい」など、運用に対する気持ちも人それぞれです。気持ちに応じた運用方法を自分で選び、お金の運用をスタートさせます。
お金を受け取る
原則60歳以降でなければお金を受け取ることはできません。つまり、60歳までは使うことができないお金になりますので、自然に老後のお金が貯まることになります。「いくらお金を出したか」「どのような運用方法を使い、その結果どうなったか」によって、受け取ることができるお金は一人ひとり異なります。受け取るお金の金額は、スタート時には確定していませんので注意が必要です。
iDeCoにまつわる疑問を細かく解説
続いてはiDeCoに関する細かなルールを、疑問に答える形で解説していきます。「運用」と聞くと、身構えてしまうかもしれませんが、1つずつルールを確認していくと、案外シンプルなものであることに気づきませんか?仕組みをしっかりと理解し、iDeCoの利用に繋げましょう。
誰でも加入できるの?
国民年金加入者はほとんど加入することができます。
ここではわかりやすいように、以下の表にまとめました。
加入区分 | 加入対象となる方 | 加入できない方 |
国民年金の第1号被保険者 | 日本国内に居住している20歳以上60歳未満の自営業者、フリーランス、学生など | 農国民年金の保険料納付を免除されている方業者年金の被保険者 |
国民年金の第2号被保険者 | 60歳未満の厚生年金の被保険者(会社員・公務員) | 勤務先で企業型確定拠出年金に加入している方 |
国民年金の第3号被保険者 | 20歳以上60歳未満の厚生年金に加入している方の被扶養配偶者の方 |
掛け金の上限額はあるの?
職業 | 上限金額 |
公務員 | 月額1万2000円 |
会社員(企業年金あり) | 月額1万2000円・2万円 |
会社員(企業年金なし) | 月額2万3000円 |
専業主婦・専業主夫 | 月額2万3000円 |
自営業 | 月額6万8000円 |
掛け金の下限額はあるの?
最低でも月5000円を積み立てる必要があります。それ以上積み立てたい場合は1000円単位で上乗せが可能です。
どうやって始めるの?
iDeCoを始めるためにはiDeCo専用の口座を開設する必要があります。iDeCoを取り扱う金融機関(運営管理機関)を通して加入を申し込みます。
現在約160の金融機関が運営管理機関としてiDeCoを取り扱っているため、さまざまな条件を比較しながら金融機関を選びましょう。具体的なiDeCoの始め方についてはのちほど詳しくお伝えします。
いつからお金の受け取りが可能?
積み立てたお金は原則60歳からの受け取りになります。これも加入期間が10年以上あることが条件となります。受け取り開始時期は70歳までの間から選ぶことができます。iDeCoは60歳以降では、新しく掛け金を入れることや増やすことはできませんが、そのまま運用を続けることは可能です。
具体的な受け取り方法は?
受け取り方法として、3つのパターンから選べるようになっています。
①一時金で受け取る
60歳に達したら、70歳になるまでの間に一括で受け取ることができます。
②年金として受け取る
60歳に達したら、5年以上20年以下の期間で、年金という形で受け取ることができます。
③一時金と年金を組み合わせて受け取る
60歳になったときに、一部を一時金で、残りを年金で受け取る方法ができることもあります。(運営管理機関ごとに異なるため、注意が必要)
30代女性がiDeCoを始めるメリットって?
老後の資金を貯める目的で利用されるiDeCoですが、「老後資金を貯めるなら銀行預金を利用すれば良いのでは?」と思うのは当然です。
もちろん銀行預金という形で老後資金をコツコツ貯めていくのも、悪い方法ではありません。しかし、iDeCoを利用することで、さらにお得に貯めることができます。
iDeCoのメリットには、積立時・運用時・受取時の3つのパータンがあります。
1.積立時の掛金が全額所得控除
iDeCoのために積み立てるお金は、年間の所得から差し引くことができます。これを全額所得控除と言い、所得から一定の金額を引くことで、税金が安くなります。
2.運用時の利益が非課税
預貯金や投資信託の利益には約20%の税金がかかります。せっかく運用して利益が出たのに、手元に残るのは利益の80%になるのはどこかもったいない気持ちになりますよね。
iDeCoに加入した場合、運用益に対して税金が一切かかりません。本来は税金として差し引かれていた分のお金も、再び運用に回すことができるのでお得ですよね。
3.受取時にかかる税金が一定額まで非課税
iDeCoは原則60歳~70歳の間に受け取ることが可能です。年金として受け取る場合、一時金として受け取る場合それぞれに、控除が適用されます。所得から一定額が差し引かれることで、税金の負担を軽くすることができます。
iDeCoを始める前に注意するべき4つのポイント
将来のセカンドライフのお金を貯めるにぜひ利用したいiDeCoですが、iDeCoならではの注意点があります。「たぶん大丈夫だろう」「他の運用方法と同じだろう」と、曖昧な認識で始めてしまうと、後から後悔することにもなりかねません。iDeCoを正しく理解するためにも、以下の4つのポイントについては必ず確認しておきましょう。
1.原則60歳まで引き出すことができない
この記事でも何度も解説している通り、iDeCoは将来の老後資金を貯めるために利用するものです。そのため、60歳にならないと原則としてお金を引き出すことはできません。
一見デメリットのように見えますが、逆に考えると途中で引き出しすことがないということです。ある程度まとまったお金を用意するためにも、60歳まで引き出せないという点は、貯蓄に手を出してしまうことへの抑止力と考えるようにしましょう。
2.投資の上限額が決まっている
先述のように、掛け金の上限額には決まりがあります。「将来に向けて、今から毎月20万円ずつ積み立てたい」など、上限を越える金額は積み立てられませんので注意しましょう。
また、会社員と自営業者では上限額も異なります。自分自身の上限額がいくらなのかは、事前に確認しておくと安心ですね。
3.元本割れのリスクがある
iDeCoを含む確定拠出年金は将来の受け取り額が確定していません。自分自身が選ぶ運用方法(リスクの高さ)によって、運用成績も異なるためです。
元本(これまで自分が払い込んだお金)が保障されず、払い込んだお金よりも受け取りの金額が減ってしまうことも考えられます。
4.口座管理手数料がかかる
iDeCoは申し込みの窓口となる金融機関だけでなく、事務委託先の金融機関や国民年金基金連合会とも関わりがあります。iDeCoの加入・運用時には、それぞれ手数料が必要になります。特に口座管理手数料は金融機関によって異なるため、複数の金融機関を比較すると良いでしょう。
実際にiDeCoを始める際の手続きの流れ
これまでiDeCoについて説明してきましたが、ここからは実際にiDeCoを始める際の手続きの流れをご紹介します。金融機関によっては必ずしも以下の流れではないこともあり、あくまでも一例として参考にしてくださいね。
1.書類を取り寄せる
iDeCoを取り扱う機関のことを、運営管理機関と言います。運営管理機関の窓口やWEBから資料を取り寄せます。WEBなら日時を問わずに申し込みができるので、忙しい30代女性におすすめです。
2.運営管理機関1社を決める
先述のように、運営管理機関によって手数料が異なります。また、どのような商品で運用するのかも運営管理機関ごとに特色があります。いくつかの運営管理機関を比較し、口座を開設する機関を選びましょう。
3.運用商品を決める
運用する商品のラインナップは、例えば低リスクなものや、ハイリスクハイリターンを特徴とするものなど、さまざまな種類があります。「どのような商品で運用するか」が、将来受け取ることができる金額を大きく左右します。バランスの良い運用を心がけましょう。
4.加入申出書を記入・提出
申込書を記入し、提出します。会社員や公務員の方は、「事業主の証明書」を勤務先に依頼し、併せて提出してください。
5.審査
iDeCoを統括する機関へ書類が回され、審査に合格すると「口座開設のお知らせ」が届きます。また、「加入資格確認結果通知」も届きますので、適切な方法で保管することをおすすめします。
6.初回掛け金の引き落とし
毎月26日に掛け金が引き落とされます。初回に引き落としのタイミングは申し込みのタイミングによって異なりますが、申し込み月の翌月に1か月分、もしくは翌々月に2か月分引き落とされます。
早速iDeCoを始めたい人向け!30代女性におすすめのiDeCo口座5選
寿命が長くなり、セカンドライフ資金をしっかりと準備しておくことが大切になってきています。「まだ先だから」「もう少し給料が上がったら」などと先延ばしにしていては、いざ老後を迎えたときに困ることにもなりかねません。
以下ではiDeCoの口座を開設するにあたっての、おすすめの金融機関を5つ紹介しています。せっかくiDeCoの知識が増えたのですから、ぜひこのタイミングでiDeCoを始めてみてくださいね。
1.SBI証券
商品のラインナップが非常に充実しており、他の金融機関と比較しても群を抜いています。単に選べる商品が多いだけでなく、バリエーションも豊富に揃っています。アクティブ型の運用商品も充実しており、積極的に運用したい方には魅力的と言えます。
30代におすすめの理由
2.楽天証券
口座管理料がSBIと並んでやすいのが楽天証券です。口座管理料は、残高に関係なく無料となっています。手数料を気にする方であれば、お得な金融機関の1つです。運用する商品は約30本と絞られているため、初心者には選びやすいのも嬉しいですよね。
30代におすすめの理由
3.松井証券
iDeCoは60歳になってから受け取るものであり、逆に言うとこれから何十年も積み立ていくものです。長く付き合うことができる会社を選ぶことはとても大切です。松井証券は創業100年の歴史があり、実績もある老舗の証券会社です。これまで培ったノウハウや顧客サポートには定評があり、安心してiDeCoを始めるならこの証券会社がおすすめです。
30代におすすめの理由
4.イオン銀行
初めて運用を始める場合、いろいろ不安が大きくて誰かに相談したくなるものです。イオン銀行を利用すると、店舗にて対面でiDeCoについて相談ができます。ネットや電話から来店予約が可能なので、時間を無駄にすることもなくスマートに相談ができます。些細な疑問にも親身に答えてくれるため、投資や運用のビギナーには嬉しいサービスです。
30代におすすめの理由
5.マネックス証券
SBIや楽天証券と並んで、口座管理手数料は最安なのがマネックス証券の特徴です。他にはないサービスとして、マネックス証券ではiDeCo専用のロボットアドバイザーが、それぞれに最適なiDeCoプランを提示してくれます。金融機関でも徐々にAIの導入が始まっており、マネックス証券ではいち早く顧客サービスにAIを活かしています。
30代におすすめの理由
監修者「Larako」のまとめ
老後のことは、考えなければいけないと分かっていてもなかなか前向きに行動を起こせないのが実情です。お金のことになると、なおさら先送りについてしまいそうになりますよね。今回ご紹介したiDeCoは、老後のお金を運用によって賢く確保していくものです。さらに税金を減らすことができる効果もあるため、利用しないのは非常にもったいないと言えます。運用や投資には縁がなかった方も、「将来の自分への積み立て」だと理解して、思い切って始めてみませんか?いろいろな運営管理機関や手数料を見比べながら、納得してiDeCoを始められる先を見つけてみてくださいね。